2026年8月30日に福井県を襲った豪雨から3日。
昨日、一昨日のブログでは、福井県内の主要なそば産地で圃場が浸水した直後の状況、そして水が引いた後のそば畑についてお伝えしてきました。
水が引けば少しずつ回復してくれるのではないか・・。
そんな期待を持ちながら圃場を見ていますが、豪雨から数日が経過し、被害を受けたソバと、何とか持ちこたえているソバとの差が少しずつ目に見えるようになってきました。今回は、福井県を代表するそば産地である大野市と勝山市の圃場を見てきました。実際に現地を回って感じたのは、同じ地域、同じ豪雨であっても、圃場によって被害の程度が大きく異なるということです。
大野市―大きな被害を受けた圃場と、持ち直しそうな圃場
まず向かったのは大野市です。
「大野在来種」を栽培する大野市は福井県内でも有数のそば産地で、カガセイフンにとっても非常に重要な原料産地のひとつです。今回の豪雨では大野市にも大量の雨が降り、そば畑への影響を心配していました。
実際に圃場を見て回ると、やはり被害は確認できました。
ただ、これまで確認してきた他の地域と少し印象が違ったのは、どの圃場も同じように傷んでいるわけではなかったことです。大きな被害を受けた圃場がある一方で、比較的影響が少なく、今後持ち直してくれそうに見える圃場もありました。
被害の大きかったところでは、ソバの茎が赤く染まり、葉が萎れています。
すでに葉が枯れ始めているものもあり、豪雨前の元気な姿とは明らかに違います。茎が赤くなっている株を見ていると、浸水や過湿によるストレスが相当かかっていることを感じます。これから葉がさらに枯れていくのか、それとも何とか持ちこたえるのか。現時点ではまだ判断できませんが、決して楽観できる状態ではありません。
一方で、比較的被害の少なかった圃場では、様子がかなり違います。
もちろん、今回の豪雨の影響を全く受けていないわけではありません。土を確認すると、まだかなり多くの水分を含んでいます。しかし、以前確認した水はけの悪い圃場のように、足を入れると深く沈み込むほどのぬかるみはありませんでした。
そして何より、ソバの葉や茎にまだ元気があります。
葉もしっかりと広がり、株全体に力が残っているように見えました。
「ここなら、もしかすると持ち直してくれるのではないか」
そう思わせてくれる圃場もありました。
同じ大野市でも、これほど違う
大野市を回って感じたのは、豪雨被害を「大野市」「勝山市」「坂井市丸岡町」といった地域単位だけで判断することの難しさです。
同じ市内でも圃場によって状態はかなり違います。地形や土地の高さ、水の流れ込む方向、排水の状態、土質など、さまざまな条件が重なって被害の程度に差が生まれているのでしょう。数百メートル、場合によっては道路一本隔てただけでも、圃場の状態が違って見えることがあります。
今回の豪雨について「今年の福井のソバはどうなりますか?」と毎日聞かれます。
しかし、実際に圃場を見れば見るほど、一言で答えることは難しいと感じます。深刻な被害を受け、今後の生育がかなり厳しい圃場もある。その一方で、豪雨を乗り越え、これから持ち直してくれる可能性を感じる圃場もある。最終的にどれだけ収穫できるのかは、もう少し時間が経たなければ分かりません。
勝山市―葉がなくなり、茎だけになった圃場も
続いて、勝山市のそば畑です。
勝山市も大野市と同様に、今回の豪雨で大きな被害を受けた圃場と、比較的影響が少なかった圃場が混在しています。
被害が特に大きかった圃場では、目を覆いたくなるような状態でした。
ソバの葉がほとんど飛ばされ、茎だけが残っています。緑の葉で覆われているはずの圃場に、細い茎だけが立っている。今回見てきた中でも、最悪の状態のひとつだと感じました。ここまで葉を失ってしまうと、回復の見込みはありません。
一方で、勝山市にも比較的状態の良い圃場が残っていました。
そして、その近辺の圃場を見ていて一つ気づいたことがあります。
ソバの背丈が、他の産地と比べて低いのです。
勝山市は播種時期を遅らせたのではないか
圃場の生育状況を見る限り、今年の勝山市の生産者さんたちは他の地域よりも播種時期を1~2週間ほど遅らせたのではないかと思います。これはあくまで圃場を見た上での私なりの推測ですが、今年の夏の天候が関係しているのかもしれません。
今回の豪雨が降る前まで、福井では長期間まとまった雨がなく、畑は土埃が舞うほど乾燥した状態が続いていました。土がカラカラに乾いている状態でソバを播いても、十分な水分がなければ発芽しません。そのため、生産者さんの中には雨を待ちながら、播種のタイミングを遅らせた方もいたのではないかと思います。
本来であれば、播種が遅れることには別のリスクがあります。
生育期間が短くなり、開花や結実の時期も後ろへずれていきます。秋の気温や天候次第では、十分に実が入る前に収穫時期を迎えてしまう可能性もあるので、単純に「遅く播いた方が良かった」と言うことはできません。
しかし今回の豪雨だけに限って見れば、播種時期をギリギリまで遅らせたことで、豪雨時点でソバの背丈がまだ低く、生育段階が若かったことが、結果として良い方向に作用した可能性はあるのではないかと感じました。
もちろん、これは現時点で圃場を見た印象で、本当に播種時期の違いが被害の大小につながったのかは分かりませんし、この先無事に生育し、実を結んで収穫できるかどうかも、まだ分かりません。ただ、他の産地で大きく育ったソバが倒れたり、萎れたりしている姿を見てきただけに、勝山市の背丈の低いソバが比較的元気に残っている姿はとても印象的でした。
干ばつのような夏から、一転して豪雨へ
今年のソバづくりは、本当に難しい年になっています。
豪雨の直前までは「雨が降らない」ことが問題でした。一か月あまりまとまった雨がなく、畑は乾燥していたので、播種しても水分が足りず、きちんと発芽してくれるのか心配する状況だったと思います。ところが、ようやく降った雨は、畑を潤す恵みの雨どころか、一気に圃場を水没させるほどの豪雨となりました。
「雨が降らない。」
だから播く時期を考える。
今度は一転して、経験したことのないような雨が降る。自然を相手にする農業の難しさを、今年ほど感じることはありません。生産者さんは、その時々の天候や土の状態を見ながら、毎年判断を重ねています。その判断が結果としてどう出るのかは、後になってみなければ分からないこともあります。
被害の全容は、まだ見えていない
福井市、永平寺町、丸岡町、あわら市、そして今回見てきた大野市、勝山市。
豪雨後の圃場を確認してきて、少しずつ今年の被害の姿が見えてきました。でもまだ「今年の福井県産そばはこれだけ収穫できる」と判断できる段階ではありません。
枯れていく圃場。
播き直しを検討している圃場。
豪雨を何とか耐え、持ち直しそうな圃場。
そして勝山市のように、播種時期を遅らせたことで、現時点では比較的元気な姿を残している圃場。
同じ福井県産そばでも、状況は一様ではありません。
これから大切なのは、残ったソバが無事に花を咲かせ、実を結んでくれるかどうかです。一度大きなストレスを受けた株が、今後どのように生育していくのか。遅く播かれたソバが、秋の気候の中で収穫までたどり着けるのか。そして、これ以上大きな雨が降らず、圃場が落ち着いてくれるのか。
まだまだ心配は尽きません。
ただ、大野市や勝山市を回って、深刻な被害を目の当たりにする一方で、元気を残しているソバを見ることもできました。前回の記事を書いた時よりも、「すべてが駄目になったわけではない」という小さな希望も感じています。
私たち製粉所としては、被害の大きさだけをお伝えするのではなく、その後ソバがどうなっていくのか、生産者さんがどのような判断をし、今年の福井県産そばがどれだけ収穫までたどり着けるのかを、これからも現場を見ながらお伝えしていきたいと思います。
豪雨を乗り越えたソバが、この先もう一度力を取り戻し、白い花を咲かせ、秋にはしっかりと実を結んでくれることを願って。










