みなさんは「茶そば」って召し上がられますか?
僕の茶そばの記憶は、小さいころに母親が年に数回、打ってくれたものを自宅で食べるくらいで、あとは、山口県の名物「瓦そば」でしょうか。福井では料理屋で季節のコースの〆で稀に見かけることはありますが、そば専門店ではまず見かけることはありません。
そんな茶そばの名店が晦庵 河道屋(みそかあん かわみちや)さん。こちらは、スティーブ・ジョブズ氏が愛したという京都の老舗お蕎麦屋さんです。
暖簾をくぐるとこじんまりとしていながら気持ちのいい庭に迎え入れられ、小上がりの座敷とこれまた開放的で落ち着く中庭を抜けた一番奥のお部屋に案内されました。
すだれから見える庭。やさしく入ってくる心地よい風。鳥のさえずりと風でゆれる木々の音。それ以外の音や声は聞こえません。日常は色んな声や音に囲まれているから、求めてもいないのに外から耳に入ってくることもありますが、静かで豊かで自分の方から聞き耳を立てたくなる感覚。なんと京都らしい。
四角い竹笊にこんもりと盛られた白く上品なお蕎麦。
江戸そばよりもほんの少し太いめでやや柔らかい。蕎麦に際立った角は見られずほんのり膨らんでいるようにも見えます。柔らかめの茹で加減なので、越前そばのように噛んで食べて美味しい蕎麦ではないですが、蕎麦をすするとほのかな淡い香りが鼻から抜けます。江戸とも信州とも違う京都ならではのそば文化なのでしょう。
通常のお蕎麦と茶そば(季節限定)を選択できるそうで、今回は茶そばを選択。お蕎麦の上に鶏の山椒焼きとたっぷりのおろし大根がのったさっぱりとした口当たりとピリッとした辛味が夏の暑い季節にピッタリのお蕎麦に仕上がっています。
抹茶色に染まった色鮮やかな茶そばは、見ていてとても涼しげです。
茶そばをそのまま食べても鶏肉の脂と大根の辛味、山椒の香りに負けて抹茶の香りを愉しむことが出来なかったのですが、全体のバランスが良くて美味しかったです。
京都の方は夏になるとそば屋では茶そばを召し上がると先日、京都にお住いの方々からお聞きして、隣の県なのにそんな文化があるとは全く知らず、まだまだ蕎麦の世界は広く深いなーとしみじみ感じました。スティーブ・ジョブズも愛した晦庵 河道屋さんの茶そば、美味しかったです。
ごちそうさまでした。
[晦庵 河道屋本店]
〒604-8085 京都市中京区麩屋町通三条上ル
電話:075-221-2525
営業時間:11:00~16:00
定休日: 木曜日、第2第4水曜日(祝日のときは前後に振替有)