海と山に囲まれた穏やかな街・逗子。
この街には、観光地的な賑わいとは少し距離を置き、日常の延長線上で食を楽しむ文化が根付いています。そんな逗子の住宅地に溶け込むように佇むのが「蕎麦 とみず」さん。
派手な看板や分かりやすい演出はありませんが、扉を開けた瞬間から「ここは蕎麦を静かに味わう場所だ」と伝わってくる、凛とした空気があります。
観光色を抑えた、逗子らしい蕎麦屋
逗子・葉山エリアはカフェや洋食の選択肢が多い中で、本格的な蕎麦専門店も近年、増えているそうです。その中で蕎麦 とみずさんは、観光客向けの分かりやすさよりも、「日常の中で通える蕎麦屋さん」であることを大切にしているように感じられ、この姿勢が店全体の落ち着いた雰囲気をつくり出しています。一人でも入りやすく、会話を楽しむことはもちろん、蕎麦と向き合う時間がとても似合う。そんな節度ある空気感は、大人の蕎麦好きにとって大きな魅力だと思います。
接客と空間が生む、心地よい距離感
接客は控えめで、必要以上に踏み込まない距離感。
居心地が良く、常連さんが多い理由もこの空気感にあるのでしょうね。お料理だけでなく、「どう過ごしてもらうか」まで含めて設計されているような気がします。
蕎麦前・一品料理の丁寧さ
蕎麦 とみずさんの蕎麦前の充実度は見逃せません。
お酒が楽しめる一品料理は、素材選びと仕事が的確です。どれも後の蕎麦へとつながる構成で、「まず一杯、最後に蕎麦」という蕎麦屋本来の流れが整っています。昼でも夜でも、お蕎麦を中心に食事ができる流れは、大人の利用シーンと非常に相性が良いポイント。
香りを大切にした、端正な手打ち蕎麦
蕎麦 とみずさんの蕎麦は、まず「香り」を強く意識させてくれます。
過度に主張するのではなく、口に運んだ瞬間にふわりと立ち上がる穀物の香り。やや太めの端正な線は、噛むほどに蕎麦本来の甘みが感じられます。食感は軽やかで、最後まで食べ疲れしない質と量。蕎麦好きはもちろん、派手さを求めない人ほど、この美味しさに納得されるのではないかと思います。
蕎麦を主役に据えた、つゆの存在感
蕎麦 とみずさんのつゆは、出汁の旨味が明確でありながら、前に出すぎません。
濃さや甘さで印象づけるのではなくて、あくまで蕎麦の香りを引き立たせる味わいで、このバランスが、蕎麦そのものの良さを際立たせています。
食事の後に少し店主の曲渕さんとお話しさせていただきました。
乾燥や多湿などの産地の気候が蕎麦の香りや品質に及ぼす影響から、保管・製粉・打ち場の環境が蕎麦の香りと品質に現れる点、産地ブレンドの工夫、地域差や年次差による変動など、いろいろなお話をさせていただきました。
逗子で選ばれ続ける理由
蕎麦 とみずさんは、確かな仕事で香り・余韻・空間・節度、そのすべてが丁寧に整えられているからこそ、「また行きたい」と思わせてくれます。逗子で、静かに、きちんとした蕎麦を食べたいと思ったときに思い浮かぶ、蕎麦好きであればあるほど、その良さが静かに染みてくる一軒です。
ごちそうさまでした。
[蕎麦 とみず]
〒249-0006 神奈川県逗子市逗子5丁目11−13
電話:046-845-4478
営業時間:11:30~14:00/17:30~21:00
定休日:水・木













