伊那市高遠町にある高遠そば壱刻(いっこく)さん。
以前から何度か足を運んでおりましたが、休業日だったりそば切れだったりでタイミングがなかなか合わなかったお店でしたが、今回ようやくお店にはいることができました。
蔵を改装したお店は周りの景色に見事に調和しているので、車で前を通ると一瞬見逃してしまうかもしれませんが、この高遠そばの旗を目印にしてください。
▼信州伊那市の「高遠そば」とは?
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1998年以降、福島県会津地方で受け継がれてきた「高遠そば」の名前が「逆輸入」されたもので、戦国時代から家庭食として親しまれてきた「辛つゆそば」を「高遠そば」という名称で高遠町に広まりました。高遠町は「信州そば発祥の地」として知られており、様々な品種や種類のそばが楽しめる地域。日本では、地域ごとに特色ある蕎麦が生産されておりますが、高遠そばも江戸時代から続く伝統的なそば文化であり、独特な味わいと歴史を持つ郷土料理と言えるでしょう。
そんな高遠町にある壱刻さんは、長野県産の中でも特に地元高遠産にこだわり、挽き臼や挽き方を変えて製粉した毎月変わる3種類+店主の山根さんが全国の在来ソバ産地を巡り、各地から直接、選び抜いた在来種を月替わりで提供されており、好きなお蕎麦を好きな食べ方で提供していただけるという、蕎麦好き、在来好きにはたまらないお蕎麦屋さんです。
開店早々に入ったのにすでにお客様がいらっしゃり、口数少なくもくもくと蕎麦を召し上がっている姿が印象的でした。
注文を終えてしばらくすると高遠そばの一揃えが供されます。
辛味大根の搾り汁、焼き味噌、薬味として辛味大根と白ネギ。高遠そばを食べるのは今回で3度目。
以前、食べたお店は出汁と味噌が甘めでそれはそれですごく美味しかったのですが、壱刻さんのは味噌も出汁も辛めでキリッと1本筋が通った感じでとても好みの味でした。蕎麦を食べている間は昆布や鰹が主張しないで、そば湯で割った時に出汁の味が引き立ってくる・・そんなお出汁が大好きです。
▲粗挽き十割蕎麦(対馬在来)
まずは皮ごと挽きぐるみにした対馬在来の対州そば。強い甘みと噛めば噛むほど感じられる、ドングリのようなクルミのような独特の穀物の香り。甘いんだけど口当たりは軽くしばらく噛んでいられる味わい深いお蕎麦なので、半分以上そのままで食べて最後の一口だけ焼き味噌を溶いた出汁でいただきました。
粗挽きと細挽きをブレンドした平打ちのお蕎麦をシチリアの手作りオリーブオイルとゲランドの塩で食べる「オーリオサーレ」。以前から壱刻さんのSNSで拝見していて、すごく興味があったので、これが味わえて嬉しかったです。
ソバとオリーブオイルの相性は良いと思っていたのですが、日本そばに合わせて食べるということは試したことが無かったので、改めて相性の良さを確認できました。オリーブオイルの華やかな香りとサラリとした油分が蕎麦の甘みと合って、「へぇ~、なるほど~こうなるんだ・・」な味わいです。何種類かお蕎麦をお召し上がりになるならそのうちの一つをこのオーリオサーレにしてみてはいかがでしょうか。ご自宅でお試しになる場合は、エクストラヴァージンオリーブオイルを選んでください。
変わり種の蕎麦板(蕎麦刺し)は、胴搗き(どうづき)製粉した超粗挽き状のそば粉を厚めにのして、1枚に切った板状の蕎麦。胴搗きとは、餅つきの要領でソバの実を粉砕する手法で米粉や餅粉などに良く利用されている製粉方法で、水車式製粉機でよく見受けられます。
麺帯の外回りは透明感があってプルンとした食感があり、内側は少し芯が残るアルデンテで石臼で挽いたそば粉とは一味違います。モチモチしているけど噛むとサクッと歯切れがよく味わい深い。この蕎麦をオリーブオイルと塩で食べてもすごく美味しい。
今回は全5種類のお蕎麦をいただき、壱刻さんの蕎麦の世界観を堪能させていただきました。
「美味い」というだけではなくて「巧い」という表現が合っているように感じます。ただひたすらにソバを愛し、どのように手を加えれば在来の持つ旨みを挽きだせるか・・どう打てば、どう切れば、どう茹でれば・・という、日々のそば造りに対する強い蕎麦愛や情熱をお蕎麦から伝わってきます。
今回ご紹介しなかった残りの2種類も非常に巧みです。
ぜひ高遠を訪れていただいて美味しいお蕎麦、美味しいお酒を楽しんでください。
壱刻さんのお隣には十一屋という酒店があり、こちらでは高遠でしか出回らないお酒や長野県内でも取り扱いの少ないお酒が取り揃えられていて、思わず4本も5本も買いこんでしまいました(笑)
[高遠そば・甘味処 壱刻]
〒396-0211 長野県伊那市高遠町西高遠1696
電話:0265-94-2221
営業時間:11:00~15:30(ラストオーダー 15:00)※売り切れ次第終了
定休日:毎週木曜日(12月~3月冬季休業)