石臼づくりと石臼製粉について福井新聞に掲載いただきました。[サンデー@ふくい 2017.4.02]

福井県内のそば なぜうまい?

福井のそばのおいしさの秘密の一つに石臼がある、とそば通は語る。福井県内のそば粉の大手製粉業者はすべて石臼でひいており、中でも福井市小和清水(こわしょうず)町の石臼は「福井のそば粉に良く合う」と多くのそば打ちが太鼓判を押していた。石臼びきのそばは本当にうまいのか。そばどころ福井を支える石臼の秘密をさぐり、福井のそばの未来を考えた。

石臼づくりと石臼製粉について福井新聞に掲載いただきました。[サンデー@ふくい 2017.4.02]
[福井新聞/サンデー@ふくい(2017.4.02)]

風味引き出す石臼が決め手 全国流通 大半は機械びき

■模様が重要
福井市高木中央1丁目の老舗製粉業カガセイフンでは、29台の石臼がモーターで稼働する。直径45センチ、厚さ約20センチの石臼が重なり上臼がゆっくりと回る。その速度でこぼれ落ちるそば粉の粗さ、風味が決まる。約150年前から使い込まれた石臼は、年月を経てすり減り、今や5センチほどの厚さだ。

同社の加賀健太郎社長(36)によると、石臼びき以外にも、ソバの実をたたいて砕く製法のロール機械びきがあるが、熱を帯びて香りが失われやすい。石臼は実を切るようにひくので、繊維が壊れず、熱も帯びにくいという。

17年間ソバと石臼を研究してきた石臼研究所キョウラク(茨城県)の中久喜正宏代表(69)は「石臼はそばの食感や香りを最大限に引き出すとの理由で好まれる」と話す。とりわけ、臼の表面に幾何学模様の溝を入れる「目立て」という作業が重要で「上質な石臼でないと味は落ちる」という。

■通の楽しみ
石臼と機械びきで、本当に味に違いがあるのだろうか。「石臼びき」と聞くからおいしく感じるだけでは?―とも思ったが、分かる人には分かるようだ。

横浜市中区石川町のそば屋「花潮」は、全国有数の産地のそば粉を試食し、福井のそば粉を選んだ。「決め手は風味の豊かさ。石臼でひいてるとは知らなかった」。純粋に味を追求したら福井の石臼びきのそば粉に行き着いたのだという。

石臼研究の第一人者とされ、「粉もん」についての研究でも知られる故三輪茂雄氏(元同志社大名誉教授)は、国産玄そばを石臼ひきにしたそば粉こそが通の楽しみ、と著書に記している。

農水省の統計によると、福井県の16年度のそば収穫量は、北海道、茨城、山形、長野に次いで第5位。そばどころと言われる県外産地を含め、全国に流通する大半が機械製粉であるのに対し、福井県の大手製粉業者はすべて石臼びきという大きな違いがある。

その理由について、加賀社長は「福井県内の製粉業者は多くが家族経営で、大量生産に転じる必要がなかったことが石臼への需要につながったのでは」と分析する。昔ながらの家族経営が続いたことが、福井のそばの風味を守ったのだ。

石工の後継者なく

石臼の名産地 福井・小和清水
福井県内の石臼生産を、江戸時代から担ってきたのが福井市小和清水町。集落に住む女性(82)は「昔はかーん、かーんと石を打つ音が良く聞こえたよ。どこの家庭にも石臼があり、大豆も小豆もひいて食べた」と、石臼が生活に根付いていた時代を思い起こす。

その名産の小和清水で「最後の石工」だった清水正生さんが、2014年に83歳で亡くなった。「そば作りにこだわりがある人しか訪れない場所や」と小和清水に誇りを持ち、県内外からの求めに応じて石臼を作り続けた人だった。いま、地域に清水さんの技を継ぐ人はいない。

福井市西大味町「そば玄」店主の玉村良敬さん(68)は「新しい石臼も注文していたんだけどね」と寂しげだ。加賀社長も清水さんに目立てを習ったといい「石工がいなくなってしまうと、味の継承をどうするのかという危機感は昔からあった」と話す。県内産の石臼が完全に消えてしまうと、福井名物「おろしそば」を守れるのだろうか。

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天気:晴れ
石臼工場内室温:13℃
石臼工場内湿度:60%

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