蕎麦春秋vol.44 [2018年2 月号]に福井県産そばの品種や品質、昨年の凶作についてなどのお話を掲載いただきました。
福井は在来種の宝庫
在来種と言えば福井。福井県では在来種を名産品として位置づけているため、栽培環境や品質管理が整備されており、県外の者でも出会う機会が他地域の在来種よりは比較的ある方。だからこそ、日本中のそば好きの間にもその評判が轟いている。
2度の台風に見舞われ17年の福井在来種は7割減
福井では、8月中旬に種まきが行われ、約70日で成熟し、10月下旬から11月上旬にかけて刈取りが始まる。しかし一方で、最近は60日ほどの生育で刈取りが行われる早刈りそばも人気を集めている。黒化率の低い状態で実を刈り取るので、実が美しい緑色であることが特徴だ。特に、新そばの時期には珍重されている。
「収穫時期の10月末~11月初旬は雪が降るため、これまで降雪被害による不作が相次いでいました。そうした生産者の悩みを解決するために、10年ほど前から旧丸岡町(坂井市)等で早刈りが始まりました」(加賀さん)
農作物は気候に左右されるのが常だが、ソバも例外ではない。特に福井は、2017年は夏と秋に台風に見舞われ収穫量が大幅に落ち込む見通しだ。8月に直撃した台風5号による大雨は発育不良をもたらした。種をまき直したものの、その後も雨が続き、立ち枯れの被害も出た。さらに、収穫期直前の10月下旬には超大型の台風21号が接近し、強風と大雨で実が落ちる被害もあった。こうした被害にJA福井県経済連では、集荷量が16年の3割程度に留まると見込んでいる。
「10年に1度ぐらいは凶作に見舞われるものですが、17年ほど酷いことはなかったですね。例年は年間70~80t仕入れていますが、8割減10~15tまで落ち込みそうです。不足分は北海道等、他の国内産とブレンドして販売するしかないでしょうね。価格も16年に比べて、1.5~2倍程度に高騰しそうです」(加賀さん)
有名な「大野在来」「丸岡在来」
福井は木ノ芽峠を境に嶺北と嶺南に分かれるが、在来種は主に嶺北エリアで栽培されている。長年栽培され続けていく中で、栽培環境や生産者のこだわり、地域の伝統といった違いが反映され、各土地柄に応じた唯一無二の在来種として存在している。
福井の在来種としてお馴染なのが、大野在来と丸岡在来。東京でも、産地にこだわるそば屋が多く扱う。大野在来は、実が小粒ながらもふっくらとしており、胚乳部分が多いのが特徴。大野市は福井でも有数のソバの産地で、特に阪谷地区は寒暖の差が激しい等、生育環境が整っているため、高品質の在来種が栽培されている。1年を通して品質が安定していることも、人気の理由だ。
丸岡在来は福井の在来種の中でも、中~大粒なのが特徴。県下最大級の作付面積を誇る丸岡町は、前述のように早刈りソバの栽培をいち早く手がけた地域でもある。丸抜きにすると、きれいなうぐいす色が現れる。
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