日刊県民福井の[教えて県民くん]にそば粉ひく石臼も県内産として取材いただきました。

2014年3月2日付けの日刊県民福井の[教えて県民くん]にそば粉ひく石臼について取材いただきました。

日刊県民福井の[教えて県民くん]にそば粉ひく石臼も県内産として取材いただきました。
[日刊県民福井提供]

記事内容
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そば粉ひく石臼も県内産

福井の名物である越前そば。原料のソバの有名産地が県内各所にありますが、そば粉をひく石臼も県内産だと聞きました。どんな石臼なのでしょうか。教えて、県民くん!

最古は100年以上使用
小和清水産の石臼の目を確かめる加賀健太郎さん=福井市のカガセイフンで(写真)

石臼といえば、愛知県出身の私は餅つきの石臼を連想するが、ソバをひくときに使うとは考えたこともなかった。しかも、福井県産とは! 永平寺町で食べた辛味そばの味を思い出しながら、調査を始めた。

上下で目は逆
「石臼」「福井県」「そば」をキーワードにネットを検索し、出てきたのが福井市高木中央一丁目の製粉会社「カガセイフン」。県内産の石臼に対するこだわりが丁寧につづられており、迷わず取材を申し込んだ。

対応してくれたのは同社の六代目加賀健太郎さん(33)。
工場をのぞくと、直径四十~五十センチほどの円柱状の石臼がぐるぐる回っている。上下に分かれ、重さはそれぞれ七十~八十キロもあるとか。

「上と下で目は逆。はさみで切り合う感じかな」と加賀さん。目というのは内側に掘られた幾何学的な溝のこと。奥歯がかみ合うようにソバの実を擦りつぶし、粉になると溝を伝って外側にこぼれ落ちてくる、という具合だ。

同社には石臼が二十九台あり、いずれも福井市小和清水(こわしょうず)町で採れた石でできている。一億数千万年前に堆積した花こう岩だ。「軟らかすぎず硬すぎず。小さく実が詰まった福井の玄ソバをひくのに合っている」

一八七七(明治十)年に創業したカガセイフン。
最も古い石臼は百年以上使われ、最も新しくても十数年はたつ。山から石を切り出して形成しても、すぐには使えない。時間の経過とともに縮みやひずみが生じ、上下がかみ合わなくなるためだ。

「十~十五年寝かして水分を飛ばし、石を締めるんです」と加賀さん。その後、あらためて目を立て、仕上げる。デビューまでの時間の長さも驚くが、石を削るのも大変な作業という。百キロ近い石を手斧(ちょうな)を使って手作業で加工するためだ。

ただ、加賀さんによると、残念なことに小和清水の石臼を作る職人は今、ほとんどいない。加賀さんの紹介で、職人の家にも足を運んだが、高齢で体調が良くないとして、会うことはできなかった。
上質な石が採れる小和清水はかつて石臼や墓石、石像などの石工が数十人はいたらしい。だが、石臼は長持ちするが故に需要が減っていく。バブル時代にそば粉は生産効率の良い機械びきが主流になったことも大きく影響した。

風味と水分保ったまま
それでもカガセイフンでは石臼を大事に使い続ける。金属製のロールを二つ組み合わせる機械びきは摩擦熱が生じ、ソバの香りや水分が飛んでしまう。でも、石臼だと風味と水分を保ったまま。「粘りがあるそば粉に仕上がる」と力を込める。

百年以上は使えるから、新調しなくても、今すぐ困るわけではない。ただ、「寝かす時間」も考えて仕込みの時期はいずれ来る。加賀さんは「他産地の石臼を使うことを検討しないといけないかも」と話す一方、「自分で作ってみたい」とも。

普段、浅くなった溝を掘る「目起こし」をしている上、三年ほど前に勉強のために職人の元にも通った。小和清水の山には石がたくさんある。難しいのは「目利き」だ。石の断層をまたいで切り出すと、使っているうちに割れてしまう。

いずれにせよ、カガセイフンにとって石臼が重要なのは間違いない。加賀さんは「ソバの原料と石臼は両輪」と話す。石臼は一台ずつ個性があり、同じ玄ソバをひいても仕上がりは異なる。
粉の細かさ、色、透明感、もちもち感…。「仕上がり方は無限。その時代に求められる粉がひけたら」。あらゆるそば粉を生み出す小和清水産の石臼。百年後の福井でも回り続けてほしい、と思う。

ポイント:西尾述志記者(写真)

■石臼の個性
石の質、大きさ、重さ、目の立て方によって1台ずつ異なる。さらに回転させる速度でひき上がりが変わる。50年使うと1センチ擦り減るとされ、カガセイフンでは5~6センチ減った石臼も。その分は鉄で補修し、使い続ける。

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