蕎麦は動脈硬化や成人病、血液サラサラになる成分が含まれているので健康に良いという話はよく聞きますが、ラーメンやうどん同じようにデンプンによる「糖質」が気になるという方も少なくありません。そこで、健康維持に役に立つ成分を豊富に含む「そば」についてお話してみようと思います。
そば粉は挽き方によって多くの種類がある(一番粉、二番粉、三番粉)
そば粉と一口に言っても挽き方で多種類あり、それぞれに特徴があり成分も異なります。ここでは分かりやすく大きなくくりで3種類に分けてご説明します。
■一番粉(内層粉) 御膳粉(更科粉)、花粉(打ち粉)
ソバの実の中心部分にあるデンプン質主体のサラサラした純白のそば粉です。
一般に歩留り(玄そばから製粉できる量)が少ないので高級なそば粉として位置づけられており、更科そばや変わりそば(柚子切り、桜きり)に使用されます。
甘みは強いのですが香りが弱くタンパク質が少ない性質から粘りも弱いので、そばを打つには熱湯で打つ「湯ごね」という特有の技術を要します。デンプン質主体なので糖質が多く、お酒で例えると大吟醸になります。
■二番粉(中層粉) 【水仙】抜実挽そば粉、【吉峰】抜粗挽そば粉
一番粉の外側にある部分が二番粉です。
香りや味が良く蕎麦にした時に美味しいとされるのがこの二番粉(中層粉)で、蕎麦の栄養素や香りの成分も多く含んでいます。
■三番粉(表層粉) 甘皮そば粉(3番粉)
そばの実の表面に近い部分を挽いた粉が三番粉で、二番粉よりも味や香りが強く栄養面も優れています。一番粉、二番粉と違って繊維質なので食感はあまりよくありませんが、糖質が一番低くお通じ改善にも役立ちます。
そば店で食べるお蕎麦で一番粉、二番粉、三番粉を見分けるには、一番粉が多くなればなるほど白くなり、三番粉になればなるほど黒っぽくなっていきます。ですから信州そばは3番粉を省いた2番粉から1番粉までの白っぽい粉が用いられますし、越前そばは1番粉から3番粉まですべて挽きこんだ田舎風な粉が使用されます。
スーパーなどで販売されている蕎麦の中には、つなぎ粉(小麦粉)が多く含まれているから白っぽくなってしなっているものや、着色して黒っぽく見せているものなどありますので、内容表示なども参考にしながら自分に合った蕎麦を買い求めてください。
ソバ特有の栄養素「ルチン」は、血管を強くし高血圧を防ぐ
蕎麦に含まれるルチンという栄養素はポリフェノールの一種で、高血圧や動脈硬化や成人病などの生活習慣病に作用します。これらの予防に必要なルチンの摂取量は、ざる蕎麦にすると1日1人前だそうですが、毎日のようにお蕎麦で食べていると出汁の塩分によって塩分過多になってしまいます。
そこで、そばの実(丸抜き)がおすすめです。
そばの実は単体で炊いても美味しく食べられますが、お米と半々で炊き上げることで普段の主食として継続しやすくなります。1日3食、毎回1膳のそばの実入りご飯を食べるとすると、おおよそ100g~150gのソバを摂取することになり、ざるそば1枚に相当します。そばの栄養素を丸ごと全部摂取することによって利尿作用やお通じ改善にも効果があります。
ソバのデンプン(糖質)は肥満になりにくい
デンプン=糖質と聞くとそれだけで敬遠する方もいるでしょう。でも安心してください。
ソバのデンプンは消化が遅い「難消化性」です。食べても消化吸収されにくく、ゆっくり行われるため血糖値が上がりにくい(GI値が低い)。結果として肥満になりにくい穀物なんです。ですから、糖尿病、動脈硬化、成人病を患っている方にお医者さんたちもお薦めするわけです。
「越前おろしそば」は蕎麦に足りないビタミンを摂る効果的な食べ方
ソバは健康維持に有効な栄養素が豊富に含まれていますが、当然ながらこれだけでは完ぺきではありません。蕎麦に足りない栄養素を野菜・海藻類から摂取することによって相乗効果が生まれます。
たとえば福井県民のスローフード「越前おろしそば」。
大根のビタミンCを一緒に摂取できますし、消化酵素アミラーゼが他の食材の消化も助けます。また大根の辛味が体を温めてくれるので冬でも冷たいおろしそばが食べられるのはそういった効果があるからです。福井県民が健康長寿なのは、おろしそばを定期的に食べていることもあるでしょう。
食べて健康を維持するなら蕎麦はとてもいい食材だと思います。